おとなの階段

千石さんには「お気に入りのもんじゃ屋さん」があります。
よく部員たちとも食べに行く店で、場所がら山吹生はよく利用している様です。
とくに千石さんはお店のおばちゃんと懇意で
「いつもの！」で通じる仲だったりします。
つきあっていた女の子たちは、オシャレ系の店に行きたがる子ばかりで
デートに利用した事は今までありませんでした。
もんじゃ屋は千石さんにとってごく親しい人と行く気のおけない特別なお店なのです。
しかし本当に特別な相手である伊武くんと知り合ってからは、
デートとしてお食事に来ることも多くなりました。
伊武くんに「おすすめのお店」と紹介して、おすすめメニューもすすめます。
安くて美味しいので伊武くんも気に入った様子。
ただ、伊武くんは必ずおにぎりセットも注文するのです。
ご飯がないと食事じゃない、そもそも腹もふくれないという、
千石さんにはない信念を持っている様なのです。
千石さんは南部長によく「おにぎり食うならもんじゃ追加しろよ！」
と半分本気でケチを付けていたのですが、伊武さん相手なのでグッと我慢しました。
それ以来、南がおにぎりを注文しても千石さんはそれを許せるようになったのでした。
これが、恋は人を成長させるってことなのかな、と
千石さんが呟くのを聞いたもんじゃ屋のおばちゃんは「がんばりなよ」と言って
こっそりベビースターのトッピングをおまけしてくれたのでした。