秋の溜息

「どうしたんだ、千石」

千石さんが何を見ても溜め息をついているので、
南部長は仕方ないなと思って声をかけます。
東方さんは「スルーしとけばいいのに…やっぱり南だよなあ…」と呟きますが、
その声は近くで頷く喜多と新渡米にしか聞こえていませんでした。
部長にメニューを確認しようとしていた室町は、
賢くも進行方向を９０度変えて東方先輩に指示を仰ぐ事にしました。
見るからにウザいテニス部エースに律儀に反応してやるのは
部長くらいである…
という事実は、部長以外周知の事実なのでした。

「ハア…通学路の街路樹も、すっかり散ったね、南」
「え？ああ。そうだな」
「伊武くんを思い出すよ…」
「…。」
「テニスコートまわりにも落ち葉が舞ってるんだよね」
「ああ、落ち葉拾いしてお、」
「伊武くんを思い出すよ…」
「…。」
「このテニスボール毛羽立ってきっちゃってるよ、南」
「だったら新しいのと交換し、」
「伊武くんを思い出すよ…」
「なんでだよ！」
「今日の弁当に柴漬けが入ってたんだ」
「はあ？」
「伊武くんを思い出すよ…」
「はあ〜？」


「マジウザイですだーん!」