その２

テニスを通して見る好きな人のその姿に思うこと　伊武side

千石さんは見た目と違って、意外と努力家だ
テニスは楽しく、なんて方針の山吹で
団体戦の要になって部員の期待に応えてる
でも、千石さんをよく知ると…目標は違う気がして
真剣に見えるのに、勝つ気がないように感じたりもする
不思議に思って聞いたら、千石さんは驚いてから笑って言った
　俺は何でも得意なぶん、ひとつの事で競うと俺より強い奴が大勢いてね。
　そんなのに挑むより、俺が勝負したい相手はいつも、俺なのさ。

なにカッコつけてんだ、と思った
戦わないうちに悟ったみたいに…勝敗にこだわらない選手なんてダメじゃん
けど、千石さんの本心だろう、その客観的な考え…
闘争心が、対戦相手でなく常に内側に向くなら、きっと勝敗に関係なく強い

考えて、ふと思った
じゃあこの人は何の勝負でも、際限なく強くなれるんだ
俺、そんな千石さんて嫌いじゃないかも…
だから千石さんが自分にも負けそうな時は、俺の所に来てもいいですよ

それで俺とテニスしましょう。