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日常的に四人のネタ混ざります
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千石さんは酒豪でも弱くてもどっちもいいですね。
sssです。




山吹大には、中学時代からの友人も多く
千石清純はキャンパスライフを充分に楽しんでいた。

飲み会などの集まりにはもう数えられないくらい顔を出している。
人当たりのよさと機転の利く話題の豊富さ、
なにより「恋人いるからメンゴー」という安全性から
盛り上げ要員に数えられているのかもしれない。

そして、千石本人も自覚していることは、「酒に強い」こと。
飲み過ぎて気分悪くなったことくらいはあるけれど、
旧友の南のように記憶を無くしたりした事はない。
皆と同じペースで飲んでいても、気付くとひとり冷静で、
「あーあ、みんな酔ってンな〜」と客観的に思うこともしばしば。
そのせいで稀に泥酔した奴の介抱要員になったりする。
ベロベロでまっすぐ立って歩くこともままならない酔っぱらい。
そんな友人を見て、ことさら酒による醜態は晒せない、と自分を戒めるのだった。
まあ、大概は要領良く抜け出して帰るのだが。



しかしこの日。
めずらしく千石は酔った。
周囲が気付いた時はすでに遅かった。
「聞いてくれよ東方ー、伊武くんが伊武くんが」
「俺は南だ!」
「そっかメンゴー、でさあ東方!伊武くんが」
「みーなーみーだ!!」
「聞けよ南!伊武くんの話なんだら!伊武くんがー!」
「俺は東方だぞ」

今日は飲み会やコンパではなく、南と東方と、新渡米と千石、
懐かしいメンバーが揃ったので
晩飯を一緒しよう、という仲良しの集まりだった。

「ダメだ、千石もう回ってるよ〜」
「酔ってないよ、酔ってないけどさあ伊武くん…ううう」
新渡米が店員に水を頼む。


この四人で飲むのは初めてだった。
もっと大勢だったり、大学のサークル仲間とだったりで、
一緒に飲んだことはあったけれど、
千石が酔う所など初めて見る3人だった。
むしろ各人、酔った時は千石に送ってもらった側だ。

大学でできた友人は酔っても見捨てて帰るけど
このメンバーを千石は放って帰ったことはない。

気心の知れたメンツで飲むせいか、千石の無茶を久々に見る。
だらしなくテーブルに突っ伏し、割りばしで皿を叩くのに合わせ
「伊武くんが、伊武クンが」を繰り返して話が先に進まない。
三人は顔を見合わせて肩を竦めた。

迷惑だけれど、嬉しくもある。
広く浅い付き合いばかりの千石の交友関係で、自分達は特別なのだと。
中、高学時代から今まで見ていればわかる。
気を許してる間柄じゃないと、可もなく不可もなく、
千石はとても無難な付き合いかたをする。


もともと世話焼きの南は、千石に肩を貸す東方の横で、携帯を取り出した。
千石の少ない特別の中でも別格、伊武にメールを送る。
入った事はないが、2人が暮らすアパートの場所は知っていた。



千石を送り届けた帰り道。
伊武が自分よりも細い腕で千石の頭を鷲掴み室内に放り込んで鈍い音がするのも気にせず
玄関先で丁寧に礼と謝罪を伸べた事に若干引きぎみになりながらも、

たまには、こうして飲むのも良いな、と。
思うのだった。





 が。

これ以来、味を占めた千石は頻繁に同じ事を繰り返す。
「聞いてくれよ東方!伊武くんがあああー!」
「東方はこっちだぜ千石」
「ああくそ、勘弁してくれ…」
「千石に懐かれると面倒だな、相手選んで潰れやがって」

こめかみを押さえた南の隣で、新渡米がボソリとつぶやいた。
「何年も懐かれ続けてる伊武って…」


「うわああああ伊武くんがー伊武くんがー」

「「「………。」」」

千石と飲むと、酔えない3人だった。


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