日常的に四人のネタ混ざります
× [PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。 陽が容赦なくアスファルトを焼いている。 歩くだけでも流れる汗に舌打ちし、跡部は夏服のタイを緩めた。 だが送迎の車を帰してしまった事を後悔はしていない。 この道の先には神尾がいるのだ。 陽炎がゆらめくのを追って歩いていたが、ふと左右を見渡し立ち止まる。 「…こんな道だったか?」 住宅地には炎天下を歩く者もおらず、風のない今日はやけに静かだ。 そういえば、セミの鳴き声も聞こえない。訝しみながら周囲を眺めた。 いつの間に知らない道に来てしまったのだろう。 普段ならあり得ない失態に顔を顰め、暑さのせいだ、と息をつく。 無駄にうろうろする気にもなれず ポケットから携帯を取り出しボタンを押して、耳にあてる。 「神尾、今どこだ?」 『あっ跡部♪跡部は今どこなんだ?』 「近いはずなんだが…」 番地の表示でもないかと首を巡らせるが、耳にした言葉にその動きが止まる。 『ウソだろ、跡部は遠くに行ってるだろ♪』 普段と変わらない快活な声 「…は…?」 『跡部の居るところ、ここからスゲー離れてるぜ♪』 「なんだと?」 『だって見てみろよ、ふどう畑がずっと広がってるだろ』 「アーン?何バカな事を言っ……、」 呆れて言い返そうとしたが、携帯に気を取られていた跡部が顔を上げると 目の前は遠く見渡す限りの緑。 低木がどこまでも続く農園の風景が続いていた。 「ここは…、」 祖母方の所持していた別荘地のひとつだ。 跡部はこめかみを抑え、暑さをしのごうと木陰に向かって歩く。 『跡部よぅ、夏休みはヨーロッパだって言ってたろ?』 「ああ、確かそうだったな」 日差しを避ける場所に立ちぶどう畑を眺めると、この暑さもいくぶんかやわらぐ気がする。 麻のシャツに木漏れ日が影をつくる。 氷帝の制服に不満はないが、夏はやはり柔らかく着心地の良い物を選びたい。 「…制服、…俺はさっきまで制服じゃなかったか?」 跡部は眉をひそめて聞いたが、いつの間にか携帯は閉じてポケットに収まっていた。 神尾は最後に何と言っていたか、思い出せない。 不意に複数の子どもの笑い声が聞こえてきた。ざわめきの様に周囲に響いている。 あぜ道の人影を呼び止めようと跡部は木陰から歩み出た。 PR |
今月のこよみ
記事別移動
ブログ内検索
おきにいり
しーゆー
ごきげんよう
|